今日の陽はさようなら

「死体愛好症（ネクロフィリア）なんだ。趣味でデスマスクを撮ってる」
ホラーサイトのオフ会で、初っ端に言い放った。わりとタイプだったから、完全にシカトされた彼を口説いてお持ち帰りさせた。
この手の爆弾投げ込むひとは、淋しがりの構ってちゃん。中身はナイーブな臆病者。軽くつつけば簡単にオチる。

ドアを開けたら、部屋は一面真っ赤だった。
まるで燃えてるみたい。窓のない壁も天井も、ポスターサイズに引き伸ばした、夕焼けの写真で埋まってた。夜の中に固定された太陽。残照が作る断末魔の赤。
「血を流してるみたいだろ？血みどろで生まれて血塗れで死ぬ。同じ日なんて一つもない。臨終の煌めきを追っ掛けて、眼とフィルムに焼き付ける。今日こそ終わりって思いながら、結局生き延びてる」
スタンド一個の灯りに沈んで、夕焼けに抱かれてる気分だった。
汗に濡れた輪郭だけがきらきら光って、この人の死体なら取っておきたいと思った。