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「雪が見たい」彼女は言った。
「春なのに?」僕が聞くと彼女は頷く。
彼女の我儘は今に始まった事ではない。今年の正月は「スイカ割りやりたい」と言い出したので僕は必死でスイカを探し、見つけ出した。
「いいでしょ、私は長く生きられないんだから」
彼女は病院のベッドで拗ねたように口を尖らせる。僕が否定しても信じてくれない。
僕は今日も彼女の我儘に付き合う。急いで汚染されていない雪を取り寄せ、彼女に渡した。
「冷たい!」彼女は子供のように笑っている。
良かった…彼女には僕の分まで長生きしてほしい。
今、この地球は酷く汚染されている。人類の99%が決して治ることのない病に罹り、いつ死ぬか分からない恐怖に怯えながら生きている。
そして彼女は1%の健康体の人間だ。
彼女は人類の宝。希望のイブ。僕はこの命尽きるまで彼女を守る。
触れる事の許されない彼女を僕は愛している。絶対に結ばれないと分かっていても、だ。
SF
公開:19/11/24 19:20

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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