ネジ

　とあるビル建設現場にて。
　男が建物を補強するネジを締めようと腰袋に手を入れる。ドライバーを忘れたことに気が付いた。
『くそっ。この憎々しいネジめ！　』
　彼は心の内で思った。

『こいつが勝手に収まればいいのに』

　何かが彼の願いを聞き入れた。
　超常的な力が突如働く。
　ネジはクルクルと軽やかに回りだし。
　やがてぴったりと収まった。
「なっ、何が起こったんだ！」
　男はこの奇妙な現象に驚愕し、逃げ出した。

　彼の背後。
　ネジを中心とした猛烈な回転はビルの形を微塵も残さなかった。