私をくるむもの

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「パパ~。これなんて読むの?」
幼い娘が人形を指さして聞いて来た。
「ああ、これは”おだいりさま”って読むんだよ」
「お殿様じゃないの?」
「ああ、ひな人形の主役はお雛様だからね。男雛はこの日ばかりは女を立てて三歩下がって歩かなきゃならないんだ」
僕の適当な言い分に娘は笑った。
「パパとママみたいだね」
成程、と思う。ウチは妻が働きに出て、僕が家事を取り仕切っている。
バリバリのキャリアウーマンである妻に僕は頭が上がらない。
そう言えば、昔は家事を取り仕切る妻が家の奥から出てこないという理由から、妻を奥様と呼んだようだ。一種の差別用語である。
奥様は男に使わない言葉だ。主夫である僕にふさわしい呼び名…ああ、お内裏様って内の裏を取り仕切る役って意味でも使えるな。なら僕はお内裏様と名乗ろう。
僕は人形でなければ、和紙でくるまれてもいない。
むしろ僕が妻と娘を温かくくるむものだからね。
公開:19/11/22 18:33

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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