ハズレしか出ないくじ

そのくじは、当たりが出ないと、巷で騒がれていた。某ソフトドリンク会社がキャンペーンで、ペットボトルにリボン状に巻き付けたもので、それをほどくと当たりかどうかが分かるというものだ。
ある日、ひとりの老人が思った。
当たりの出ないくじは、そもそもくじなのだろうか。ハズレしか出ないのならば、それはくじではなく、紙切れに過ぎないのではないか。当たりが出るかもしれないという期待感の末にハズレが出るから、それはハズレな訳で、そもそも当たらないのなら、それはハズレではなく、ただハズレと書いてあるだけの紙切れに過ぎない。
これを人生に置き換えるとどうだろう。私の人生がハズレだとしたら、選択肢次第では、当たりも有り得たのだろうか。そもそも当たりって何なのか。分からない。いや、この人生も最初から当たりなどなかったのか？ハズレてすらいないのかもしれない。買っておいたクジを引いた。「当たり」と書いてあった。