節目の買い目

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「タメさん、強かったなぁ」
「言ったろ!俺の目に狂いはねぇって」

年末の大一番が終わった競馬場。陽が落ち、すっかり暗くなったスタンド。

「これで、心残りはない?」
「ああ、デビューから目をつけてた馬がグランプリ勝ったんだ。思い残すことはねぇ……最高の節目だ」
「言ってたもんな。『この馬がG1勝つまでは死んでも死にきれねぇ!』って……タメさん、三年前ウインズでどうして俺に声かけたの?」
「直感かな。俺と似たニオイがしたんだ。コイツも天涯孤独の競馬ジャンキーまっしぐらかな、って」
「ハハッ、ひでぇ」
「ケンタ……お前はまだ若い。まっとうに働いたらどうだ」
「……」
「お前の人生、まだ向正面よ。仕掛け次第でいくらでもまくれる。大丈夫、俺の目に狂いはねぇ……」

「そろそろ閉場です」
係員の声に、ひとりスタンドを後にする。

俺は、タメさんの形見のキャスケットを目深にかぶり、人混みへと紛れた。
ファンタジー
公開:19/11/23 00:40
更新:19/11/23 00:38
節目

makihide00( 鳥取→東京→福岡 )

30代後半になりTwitterを開設し、ふとしたきっかけで54字の物語を書き始め、このたびこちらにもお邪魔させて頂きました。

長い話は不得手です。400字で他愛もない小噺を時々書いていければなぁと思っております。よろしくお願いします。

Twitterのほうでは54字の物語を毎日アップしております。もろもろのくだらない呟きとともに…。
https://twitter.com/makihide00

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