いつか一人前に
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報奨金を手に、憧れの暖簾をくぐった。
先月は本当に運が良かった。実力以上に契約数が伸び、気がつけば月間トップに。上司は僕の肩をバンバン叩き、「こういうのは景気良く使っちまえ」と笑った。そこで思いついたのが、上司が贔屓にしてると噂の、この寿司屋だった。
でもやはり身分不相応だったか、おしながきには時価の文字が並ぶ。むうと目を凝らしていたら、おまかせ握りだけ違う文字。恐るおそる大将に尋ねる。
「その時その時の価格が時価。その人その人の価格が人価だよ」
味を楽しむ余裕などなかった。飲み込む前に次を手に取り、無理やり喉の奥に押し込んだ。湯呑みをぐいと傾け、慌てて席を立つと…。
「お客さん、今日のお代は無しだ。頑張って頑張って、もうひとつ頑張ったら、またおいで」
新しく入ってきた客が「おまかせ!」と叫んで隣に座った。大将はギロリと目を光らせて、手酢で湿らせた指先を、ぱちんと打ち鳴らした。
先月は本当に運が良かった。実力以上に契約数が伸び、気がつけば月間トップに。上司は僕の肩をバンバン叩き、「こういうのは景気良く使っちまえ」と笑った。そこで思いついたのが、上司が贔屓にしてると噂の、この寿司屋だった。
でもやはり身分不相応だったか、おしながきには時価の文字が並ぶ。むうと目を凝らしていたら、おまかせ握りだけ違う文字。恐るおそる大将に尋ねる。
「その時その時の価格が時価。その人その人の価格が人価だよ」
味を楽しむ余裕などなかった。飲み込む前に次を手に取り、無理やり喉の奥に押し込んだ。湯呑みをぐいと傾け、慌てて席を立つと…。
「お客さん、今日のお代は無しだ。頑張って頑張って、もうひとつ頑張ったら、またおいで」
新しく入ってきた客が「おまかせ!」と叫んで隣に座った。大将はギロリと目を光らせて、手酢で湿らせた指先を、ぱちんと打ち鳴らした。
その他
公開:19/11/22 23:36
400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。
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