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「それ、どうしたの?」
枕に投げ出した掌、親指の付け根に赤い痣。
「キスマーク」
悪びれもせず笑って、その手で抱き寄せる。いっそ噛んでやろうかと思う。
「冗談。会社でぶつけた。多分」
掴まれたの間違いでしょ。爪の長い細い指。
――ふざけんな。
次の週末、喉元に同じ痣。
シャワー浴びてから気付いた。
「どういうつもり?」
「……んー、何?」
眠そうな生返事。1分くらい黙ってたら、いびきが聞こえてきた。叩き出してやろうにも、いっぺん寝たら梃子でも起きない。
会社の誰か知らないけど、さすがに『ぶつけた』なんて言い訳通らないわよ。
痣の上に爪を立てる。対角線に引いて、特大のバツ印。後でせいぜい焦ればいい。
ベッドを飛び降りて数秒後、咳き込む様な息遣い。
振り返って、見た。
仰け反った喉に巻き付いていく。バツの上から、両手で握り潰す様に。
ゴグン。篭もった嫌な音。
それきり何も聞こえなくなった。
枕に投げ出した掌、親指の付け根に赤い痣。
「キスマーク」
悪びれもせず笑って、その手で抱き寄せる。いっそ噛んでやろうかと思う。
「冗談。会社でぶつけた。多分」
掴まれたの間違いでしょ。爪の長い細い指。
――ふざけんな。
次の週末、喉元に同じ痣。
シャワー浴びてから気付いた。
「どういうつもり?」
「……んー、何?」
眠そうな生返事。1分くらい黙ってたら、いびきが聞こえてきた。叩き出してやろうにも、いっぺん寝たら梃子でも起きない。
会社の誰か知らないけど、さすがに『ぶつけた』なんて言い訳通らないわよ。
痣の上に爪を立てる。対角線に引いて、特大のバツ印。後でせいぜい焦ればいい。
ベッドを飛び降りて数秒後、咳き込む様な息遣い。
振り返って、見た。
仰け反った喉に巻き付いていく。バツの上から、両手で握り潰す様に。
ゴグン。篭もった嫌な音。
それきり何も聞こえなくなった。
ホラー
公開:19/11/20 23:23
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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