倒産坊さん

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「南無妙法蓮華経」
 会議室で袈裟姿のお坊さんがお経を唱え、黒いスーツ姿の男女三人はそれに耳を傾けた。
 お経が終わり、お坊さんは穏やかに講話した。
「今日はお忙しい中ありがとうございます。人とおなじように法人にも寿命があります。今日で三回忌でしたね」
 元人事部長は、
「いまだに悲しみが癒えません。再就職もまだですし」
 隣の女性も、
「そういえば、予兆がありましたね。早朝役員会議が増えましたし」
「そうそう。総務にも、経費節減のお達しが厳しくなって、ボールペン支給止めたり、スイッチを消せと促したり」
 元総務部が言うと、女性が話を引き取った。
「そう言えば、ウチのビルに後から入ったこの会社も、経費節減の張り紙が」
 お坊さんの口元が緩んだとき、ドアがノックされ、白髪の男性が苦い顔で覗き込んできた。
「すみません。ウチの会議室使ってもらうのはいいけれど、変な事言わないでくれます?」
その他
公開:19/11/21 23:30
更新:19/11/26 00:31

吉村うにうに( 埼玉県 )

はじめまして。田丸先生の講座をきっかけに小説を書き始めました。最近は、やや長めの小説を書くことが多かったのですが、『渋谷ショートショート大賞』をきっかけにこちらに登録させていただきました。
飼い猫はノルウェージャンフォレストキャットです。
宜しくお願い致します

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