ボーカル, 漂白, 水を得た魚

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よく晴れた日曜日。
お昼過ぎにベッドを抜け出したわたしは、洗濯機に洗剤と漂白剤を入れながら、昨夜のライブを瞼の裏に思い浮かべていた。

ボーカルマイクを持つと途端に、いつもの気怠げな雰囲気から一変し、長い前髪からちらりと覗く目をぴかぴかさせる彼。
まるで水を得た魚みたいだ、なんて。飽きもせずいつものように最前列で彼だけを見つめていた。

三十路の分際で、両親からの催促も、友人たちのゴールインも、何もかも見ないフリして。
今はまだ、彼だけを視界に写していたいの。

洗い立ての白く輝くワイシャツを見て、またあの瞳を思い出した。心臓が荒く音を立てる。
ああ、今日も沼から抜け出せない。
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公開:19/11/21 22:35
更新:19/11/22 00:24

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