薄暗がりの淵で

2
2

「あーあ、言っちゃった」
 ベッドの縁に腰掛け片膝を抱き寄せた彼女の薄い唇が、そんな言葉を紡いだ。
 室内を照らすのは枕元の電灯ひとつ。情欲と愛情に蹴飛ばされるようにして婚約を持ちかけた僕は、そっと固唾をのんだ。
 付き合いこそ長いけれど、恋人なのかすら判然としない。潮の満ち引きにあわせ浅瀬で水を掛け合うような、そんなあやふやな関係だったのに。
「明日は指輪を買いに行っちゃわないと、だね?」
 しなだれかかる彼女を搔き抱き、再度肌を重ねた。電球の寿命か暖色の光が明滅し、ふっと絶える。不思議と恐怖はない。
 君と二人なら。きっとどんな夜も生きていける。


お題(二八十字以内)
「あーあ、言っちゃった」〜「どんな夜も生きていける」
恋愛
公開:19/11/21 20:56

ぴろしき

Twitter
 @yosisige

上記アカウントにて駄文を垂れ流しているインターネットポエム揚げパン。
にほんご、すき。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容