首席秘書官

日米首脳会談を終えて、総理は分刻みの予定をすべてキャンセルするように首席秘書官の私に命じた。
大統領の希望で、晩餐会のあと、官邸でパジャマパーティーを開催することになったという。
総理はおやつを探しに都内のアンテナショップへ向かった。官房長官はデパ地下へスイーツを。外務大臣は行列の絶えないタピオカ。ほかの大臣たちも、パンケーキに葛きり、大福にケバブにきなこ餅。あらゆるおやつを探しまわった。
かつてない信頼関係。揺るぎない同盟。真の友人。大統領が今夜求めたものは、ジャパニーズおやつだ。
「ケバブはおやつじゃない！」
官邸に総理の怒号が響く。
すぐに駆けつけた私は会場のにおいに驚き、ケバブを買った大臣の更迭を進言した。そしてにおいを元から消すスプレーを会場にまいた。次々に消えていく総理と大臣たち。
更地になった官邸に大統領がたどり着くと、彼もまた消えて、私は大量のパジャマを畳んでから帰った。