王子さまと僕

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僕はすべての仕事をキャンセルして旅に出た。5年前の記憶をたどり、順番通りに。

ゆきの笑顔を思い浮かべ、あの楽しかった日々を回想した。思い出補正が掛かっているのは充分承知の上だ。

日本中をオートバイで旅する中で、僕は考え続けていた。自分はいったい何をしたかったんだろう?

旅から戻った僕はあの喫茶店でゆきを見つけた。

「あんた、ホントに遅いんだから。待ちくたびれたよ。」

「ごめん。これあげるから許してくれる?」

僕は小麦の穂のしおりをゆきに手渡した。それはかつて僕が王子さまから“いいこと”の話を聞いた時にもらったものだった。

「遅いな、きみは。やっと気がついたのかい?」

見上げる夜空にぽつんと星が光り、そう語りかけてくる気がした。

本当に大切なものを僕は見つけたんだ。たぶん。
ファンタジー
公開:19/11/26 06:00
更新:19/11/26 19:45
188 星の王子さま オオカミの自信作

武蔵の国のオオカミ( ここ、ツイッタランド、タイッツー )

武蔵の国の辺境に棲息する“ひとでなし”のオオカミです。

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