剛腕ホールケーキ

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 「球界史上最速!」という見出しを何度見ただろう。
 毎年のように球速が伸び、今や200キロを超えるのは当たり前。だが、一方で打者の質が投手に追い付いていなかった。ストレートを投げればどれもゴロ、フォークを投げれば全て三振、三者凡退。これでは試合にならない。
 それならと硬球を重くしてみれば、以前より当たりはするけど前に打てない。

 この前人未到の難問をいかに解決すれば良いのか。
 その時、ふと思った。
 ボールがダメなら、ケーキを投げれば良いじゃない、と。

 「新スポーツが誕生した瞬間ですね!」と実況が話すと、興奮気味に体を乗り出した。

「本日は発案者である誉野史さんにお越しいただており――大きな当たり!」

 野球が廃れて久しく、今や日本は野ホールケーキ大国だ。
 165キロのケーキが弧を描いて外野へ飛んでいく。レフトが上手に顔面キャッチすると、審判は握りしめた右手を上げた。
青春
公開:19/11/19 23:15
更新:19/11/28 12:32
スクー

竹箒390円

綺麗な文章を書きたいと思ってます。
どうぞ、よしなに。

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