Parabolic Rainbow

10
9

虹が落ちる瞬間を見たんだ。
橋でも円でもなく放物線だった。雨雲の切れ間から飛び降りた光が、対岸の土手にぶつかって跳ねた。そのままバウンドして川を越え損なって、中洲の木に激突して落っこったんだ。
荷物全部放っぽって走った。200m延長線上に間違いなくあった。周りの木も石ころも水溜りも、そこだけ七色に染まって、そいつは塗りの剥げたみたいな白っぽい色で、濡れた砂と枯草まみれでうずくまってた。虹の軌跡は途中まで消えかかってて、光もだんだん透き通って。何でだろうな、『返してやらなきゃ』って思ったんだ。
掌に掬ったら、薄い火花がチリチリした。水で洗ってシャツの裾で拭いて、思いっきり振り被って投げた。
逆向きの放物線が灰色の空を突っ切って、雲のど真ん中で良い音がした。雷じゃない、ミットの音だった。俺は空とキャッチボールしたんだ。
本当だって。その証拠に、昨日のニュースの虹、ちょっとずれた二重線だったろ?
青春
公開:19/11/19 21:34
更新:22/04/04 13:48
月の音色 月の文学館 テーマ:見つめるその先に 採用いただきました。

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO

ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容