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虹が落ちる瞬間を見たんだ。
橋でも円でもなく放物線だった。雨雲の切れ間から飛び降りた光が、対岸の土手にぶつかって跳ねた。そのままバウンドして川を越え損なって、中洲の木に激突して落っこったんだ。
荷物全部放っぽって走った。200m延長線上に間違いなくあった。周りの木も石ころも水溜りも、そこだけ七色に染まって、そいつは塗りの剥げたみたいな白っぽい色で、濡れた砂と枯草まみれでうずくまってた。虹の軌跡は途中まで消えかかってて、光もだんだん透き通って。何でだろうな、『返してやらなきゃ』って思ったんだ。
掌に掬ったら、薄い火花がチリチリした。水で洗ってシャツの裾で拭いて、思いっきり振り被って投げた。
逆向きの放物線が灰色の空を突っ切って、雲のど真ん中で良い音がした。雷じゃない、ミットの音だった。俺は空とキャッチボールしたんだ。
本当だって。その証拠に、昨日のニュースの虹、ちょっとずれた二重線だったろ?
橋でも円でもなく放物線だった。雨雲の切れ間から飛び降りた光が、対岸の土手にぶつかって跳ねた。そのままバウンドして川を越え損なって、中洲の木に激突して落っこったんだ。
荷物全部放っぽって走った。200m延長線上に間違いなくあった。周りの木も石ころも水溜りも、そこだけ七色に染まって、そいつは塗りの剥げたみたいな白っぽい色で、濡れた砂と枯草まみれでうずくまってた。虹の軌跡は途中まで消えかかってて、光もだんだん透き通って。何でだろうな、『返してやらなきゃ』って思ったんだ。
掌に掬ったら、薄い火花がチリチリした。水で洗ってシャツの裾で拭いて、思いっきり振り被って投げた。
逆向きの放物線が灰色の空を突っ切って、雲のど真ん中で良い音がした。雷じゃない、ミットの音だった。俺は空とキャッチボールしたんだ。
本当だって。その証拠に、昨日のニュースの虹、ちょっとずれた二重線だったろ?
青春
公開:19/11/19 21:34
更新:22/04/04 13:48
更新:22/04/04 13:48
月の音色
月の文学館
テーマ:見つめるその先に
採用いただきました。
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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