オルゴール人形

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暗闇にスポットライトが差し込む。
流れ出す澄んだメロディー。
花びらが開くように体を起こして踊りだす。
くるりくるりと指の先まで美しく。

もっと色んな曲を踊りたいけれど、それは贅沢と言うものだろう。
私には舞台が有り、ここで唯一のバレリーナ。
私だけのステージ私だけのスポットライト。

傍から見たら華やかで美しいバレエの世界。
裏では激しい足の引っ張り合い。
当然やり返したやられた以上に。
その繰り返しの中で、私は聞くことになった。
自分のアキレス腱が引きちぎれる音を。

私は素晴らしいバレリーナだったこの世の誰よりも。
だけど私の左足はもう思うように動かなくなった。
嘆き悲しみ荒れに荒れていた時に送られてきたオファー。

左足は土台に埋め込まれた。
くるくると踊れるのは土台が回るから。
可哀想な囚われの身と人は言う。
馬鹿馬鹿しい。
美しいでしょう?
オルゴールの中にだけある私の永遠。
ファンタジー
公開:19/11/19 11:02

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