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春月11巡りの7日目(AmberDay)
~キュフェナ区シエルフ小路にて~
主人とわたしが迷宮と呼ばれる路地を抜けた途端、眩しいほどの歓声が弾け飛んできた。
本来は快感と高揚を湧きたたせるそれも、今の我々には全くの逆効果だった。
主人は、わたしにだけ聞こえる声で言ってきた。
「ニール。これは俺たちの勝ちか?」
「…」わたしは否定した。
「なら、負けか?」
「…」それも否定した。
「ドロー(痛み分け)。ドロー(痛み分け)なんだよな。これは…」
「…」わたしは答えられなかった。
「そうだな。それも違うな」
そして主人は、その顔に勝ち誇った笑みを浮かべると、"それ"を握りしめた手を高く掲げてみせた。その結果、歓声はさらに大きく弾け、みぞれのような痛みがわたしを襲った。
その中、ニコやかな表情を維持する主人を見て、薄情にもそんな擬装をせずに済む自分は、とても幸運だと思ってしまった。
~キュフェナ区シエルフ小路にて~
主人とわたしが迷宮と呼ばれる路地を抜けた途端、眩しいほどの歓声が弾け飛んできた。
本来は快感と高揚を湧きたたせるそれも、今の我々には全くの逆効果だった。
主人は、わたしにだけ聞こえる声で言ってきた。
「ニール。これは俺たちの勝ちか?」
「…」わたしは否定した。
「なら、負けか?」
「…」それも否定した。
「ドロー(痛み分け)。ドロー(痛み分け)なんだよな。これは…」
「…」わたしは答えられなかった。
「そうだな。それも違うな」
そして主人は、その顔に勝ち誇った笑みを浮かべると、"それ"を握りしめた手を高く掲げてみせた。その結果、歓声はさらに大きく弾け、みぞれのような痛みがわたしを襲った。
その中、ニコやかな表情を維持する主人を見て、薄情にもそんな擬装をせずに済む自分は、とても幸運だと思ってしまった。
ファンタジー
公開:19/11/18 22:43
更新:19/11/30 21:45
更新:19/11/30 21:45
連載
怪盗
探偵
まずは、こんにちは。
練馬区で活動中の、趣味の絵描きです。
小説・脚本なども執筆してます。
【番号なし】 用語・設定解説
【Ⅰ】 連載作品『WonDer BroS』 探偵と怪盗の対決が娯楽化した世界での物語。
【Ⅱ】 短編連作『Story Of Dri(P)Party』
【Ⅲ】 連載作品『根源悪の牧場』 戦争による差別と弾圧に支配された世界での物語。
【Ⅳ】 連載作品『ドライワンダーに遣う』
【001~】 短篇集『short TaleS』
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