シブヤ。

シブヤ。
この街の夜は長く、そこらじゅうで人の騒ぎ声、鳴り響く音楽、都会の喧騒が蠢いている。
この街に来るのは初めてではない。ただ、以前の私はこの夜を知ることはなかった。
就職して一年。結婚を意識した恋人に別れを告げられ、のめり込むものもさほど無かった私。友人の誘いで初めてシブヤの夜に降り立った。お酒の味もさほど知らない。音楽は昼のライブハウスで聞く程度。興味本位と少しの不安でクラブのドアを開ける。

初めての空間。むせ返るほどの煙と鳴り響く音楽。お酒まみれの楽しそうな人たち。皆私と年齢もさほど変わらないように思える。
200名程度が入れるこじんまりとしたその箱。
入り口からすぐDJブースに目がいった。

私にとって初めての体験。電撃が走る。
瞬間、ブースにいた彼がこちらを見て手招きする。

彼の音楽に引き寄せられるように、
私は未開の地へのめり込んでいった。

まだ、過ちとも知らずに。