声色

『砂糖何個入れる？』
角砂糖をトングで摘む。声は、ミルクたっぷりのカフェオレ色。頭の中が１個分余計に甘くなる。
「１個。ミルク無しで」
『大丈夫？濃い目に淹れちゃったけど』
軽く首を傾ける。声は、とろけるチョコレート色。ノンシュガーでも良かったかな。デザートのフォンダンショコラから、ほんのり洋酒の香り。
『自信ないよ。初挑戦だし』
「え、うそ。……すごい美味しい」
『ほんと？良かった、すごい嬉しい』
カシスジェラートの大人びた赤から、ふんわりキャラメルムース色。見てるだけで頬が緩む、甘くて甘い色の声。
端末に打ち込んだ内容や、内蔵カメラの取得情報に合わせて、文字の色を変えてくれるアプリ。今日のテーマはスイーツカラー。
実際にどんな音か、聞く事は出来ないけど。彼が私に見せる声は、いつも幸せの色をしてる。
『うん。美味い』
真正面の笑顔。フォークの先から溢れるベリーソースの、夢見る様なバラ色。