SIB CITY

ある日、俺は中古のテレビゲームを手に入れた。
「一緒にやらない？」
『古っ。勝手にやれば』
彼女の反応は冷たい。
渋谷を開発し、人が集まる場を作るゲームらしい。画面は粗いドット。
えっ、俺たちの姿から室内までドットだ！現実と繋がっているのか？彼女は怒ったけど、レトロな表情にどっと笑った。
「まずは道路」
俺たちみたくランブルな交差点。感情の起伏のような坂。ぶつかる個性は、キャットストリートへと逃がす。
『ねぇ、ロープウェイ走らせて』
彼女のわがままにも、ビルの谷間に張ったロープをTSUTAわせた。ゴンドラになった部屋からは、人の流れがよく見えた。
パルコやタワレコを建てると、新たな人の流れがそこに混ざった。
街が成長すると、画面も綺麗になり、俺たちは互いを許せるようになった。
『ねぇ、出掛けよっか？』
彼女が笑った。
「いいね」
アップデート中の渋谷へ繰り出し、俺たちは今、視察デート中だ。