渋谷のウォールアート

私の仕事は渋谷中のウォールアートを消すことだ。
今日はシアターフォーラム近くの駐車場の落書きを消しに来たが、現場に到着した私はハッとした。その絵に描かれていたのは、私の親友頼子なのだ。スマホで撮影しLINEで彼女に画像を送った後、すぐにその絵を塗りつぶした。

その夜、頼子に飲みに誘われた。
店で合流したときからずっと頼子は青ざめた表情をしていた。
「最近噂になってるの。ウォールアートに描かれた人は10日以内に死ぬって……」
「まさか……有り得ないでしょ。そんな話」
「嘘じゃないって。本当に死んだ人もいるんだから」

三日後――。
頼子は本当に死んでしまった。交通事故だった。
あのとき私が信じていれば結果は変わっていたかもしれない。

翌日の仕事は、神南郵便局前から明治通り側へ抜ける高架下のウォールアートを消す仕事。私は驚愕した。そこに描かれていたのは私自身だったから。