【R15】青春裸族

　世間はネット上のイイネ数、フォロワー数こそが資産と見なされる評価経済社会にシフトし、額縁ブームが訪れた。
　ネットユーザーがファボやブックマークを乱用するうちに、本当に残しておきたい自分だけの思い出は、〝青春フレーム〟とよばれる額縁を仕立てて保存する文化が生まれた。
　高校の部活で輝かしい成果を残せば金色の額縁に。母親が掃除に入った自室に純文学誌とティッシュ箱が残されていれば鯨幕の額縁に。皆特別な記憶を特別な額縁に収めた。
　やがてアラサーを過ぎても青春を額縁に収められない俺たちを、若者は〝青春裸族〟と呼んで変態扱いした。若者ごときに青春の何たるかを語られてたまるか。青春はノスタルジー。俺の青春は現在進行形、まだ額縁なんかに収まらない。
「お前、そこで何してる！」警官だ。
　俺は今、思い人のパンティーを頭に被っただけの全裸で、路上に仰向けになって彼女を待ち構えている。
「青春してんだ！」