SHIBUYA系

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一斉に歩き出した人波に「おお~」と声が漏れた。何回見てもウケる。一緒に見ていた友だちも爆笑している。
「何でぶつからずに歩けるワケ? 野生の勘? 昔の人って、原始人?」
VRで再現された昔の渋谷の、なんとかいう交差点。今はもう、通る人は誰もいない。
「ウチら、外に出ないから、歩き方とかもうわかんないよね」
学校はVRで出席。買い物はドローンで通販。年中降り注ぐ灼熱の太陽と紫外線を避けるため、不要不急の外出は制限されている。
「みんなアバターじゃなく生身で髪こんな色にしてたとか、部族じゃん」
「え、逆にカッコよくない? 私も足、人魚にした」
最新のマーメイドモデルの義足を撫でる。硬い鱗がギラリ、光る。
「マジで? 親、怒るっしょ」
「怒られたけど、もう足、切っちゃったし。どうせ退化して歩けないんだから、義足の方が便利だしカワイイし。なんで大人って、そういうの、わかんないのかな。頭、固いよね」
SF
公開:19/11/17 17:20

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