インターバル
4
5
先生は、美しいものを愛している。
次の演奏会で使う楽譜を探す、ふりをして薄暗い準備室の床に座りこむ。運動部が上げる喚声と、ぱー、ぱらぱー、という管楽器の音が混じり合う。放課後。ついこの間まで音楽室に張りつめていた緊張は解け、ゆるゆるで、私たちの夏はもうどこにもいない。
探すふりをして、安堵を覚えてもいる。私には、もう限界だった。何度教わっても、先生の目指す音を生み出せない。絶望する毎日だった。完璧に出来たことなんて、一回もなかった。本番でさえも。
結果を聞いて泣き崩れる私たちに、こんなに素晴らしい音楽は聴いたことがない、と先生は嘘のない目で言った。
もうすぐ、合奏が始まる。
音楽室に戻り、換気と称して窓を一つずつ開け放っていく。
先生と私たちの美しい音楽が、街まで、どこまでも響けばいいと思った。
お気に入りのマレットを選び取る。紅い葉がからむ夕方の風に、温かい木琴の音をのせた。
次の演奏会で使う楽譜を探す、ふりをして薄暗い準備室の床に座りこむ。運動部が上げる喚声と、ぱー、ぱらぱー、という管楽器の音が混じり合う。放課後。ついこの間まで音楽室に張りつめていた緊張は解け、ゆるゆるで、私たちの夏はもうどこにもいない。
探すふりをして、安堵を覚えてもいる。私には、もう限界だった。何度教わっても、先生の目指す音を生み出せない。絶望する毎日だった。完璧に出来たことなんて、一回もなかった。本番でさえも。
結果を聞いて泣き崩れる私たちに、こんなに素晴らしい音楽は聴いたことがない、と先生は嘘のない目で言った。
もうすぐ、合奏が始まる。
音楽室に戻り、換気と称して窓を一つずつ開け放っていく。
先生と私たちの美しい音楽が、街まで、どこまでも響けばいいと思った。
お気に入りのマレットを選び取る。紅い葉がからむ夕方の風に、温かい木琴の音をのせた。
青春
公開:19/11/17 16:07
森絵都さんの『ショート・トリップ』が大好きです。
ログインするとコメントを投稿できます