大富豪の遊び

　その日、真夜中の二時から二時半までの三十分間、渋谷駅周辺の一定区間が封鎖された。
「上空では数機のヘリが待機しています。これから何が起こるのでしょう」
　テレビやネットは渋谷をライブで映していた。
「あっ。ヘリから何か投下されました」
　真っ暗な空から丸いものが光を放ちながら次々と落下していく。光る球は道を埋め、転がり、道玄坂方面はピンク、宮益坂方面には青い光を放つ川が産まれた。渋谷駅に到達した光の川は混じり合い紫色の光に変わる。
「なんでしょうこれは」
「すごく……きれいです」
　報道陣がやっと言葉を放った頃にはエンジン音と共にショベルカーが光る球を回収し始めていた。
　映像は史上最高の視聴率と再生回数を記録し、莫大な広告収入を得た。回収し損ねた発光ボールを拾うと願いが叶うという噂まで生まれた。
「次はどこに何を仕掛けよう。金をかけた大掛かりな遊びほど儲かるなんて不思議な世の中だ」