スペイン坂

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俺は目を疑った。
目の前には異国の街並みが広がっているのだが、さっきまで歩いていたのは確かにスペイン坂なのだ。
あまりの天気の良さに空を仰いだ次の瞬間、周りの景色が一変していた。
俺は何が起きたのか全く分からなかったが、とにかく周囲を観察することにした。
道の両端にはレンガ造りの建物があり、派手な色で塗装されている。
遠くの方からは、懐かしさを感じさせる民謡のような歌が聞こえてくる。
歩道には規則正しく並んだタイル。
早足の白人たち。
俺は高揚感と恐怖が混ざった感情に押され、思わず足を踏み出した。
が、その時体に衝撃が走った。
誰かとぶつかったのだと瞬時に察する。
「すみません!」
そう発した時には、もう異国の街は消え去っていた。
いつものスペイン坂がそこにはあった。
「今のは一体……」
幻覚か、あるいは夢だったのだろうか。
もう一度空を仰ぐ。
どこからかあの民謡が聞こえる気がした。
公開:19/11/17 13:50

田坂惇一

ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。

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