0
3

馬鹿な親もいたものだ。交差点で子供から目を離すとは。

私は人気小説家だ。私の描くキャラクターは魅力的でファンからは「こんなヒーローに憧れる」と言ってもらえ、作家仲間からは「どうしたら素敵なキャラクターを思いつくのか」と聞いてもらえる。
「自分の中の要素を育てることですね。経験からしか産めません」と応えているが実は嘘だ。私は渋谷の街で見かける魅力的な人を作品に投影している。そして幼い頃から様々なことから逃げ続けた私が選ぶことができなかった行動をキャラクターにさせているだけなのだ。

子供はピカピカ光るボールを追いかけて車道へ飛び出していく。
トラックが気付いている様子もない。

仕方ない。私は生まれて初めて逃げない行動を選んだ。
車道に飛び出し、子供を抱いてトラックを躱す。
子供の泣き声。母親の驚きと感謝の声。周囲の賞賛の声。

これはまた次の作品で使えるぞ。
事故の現場で私はそう思った。
ホラー
公開:19/11/17 20:16

海野ひろ( 神奈川県ー東京都 )

小学生のころから小説が好きです。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容