自称主人公候補

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田んぼに支配された田舎で生まれ育った。決意して渋谷に引っ越したのが一年前。最先端のファッションに身を纏った連中が、皆が皆主人公のような顔をして闊歩している街だ。
世界には脇役と主人公、その他大勢のモブがいる。18歳の時にその中のどれかに役割を与えられるが、このままいくと私は名前もつかないモブ確定だ。世界の80%以上がモブ役で終わる中、4%しか主人公はいない。そして主人公役は渋谷出身が多い。私は未来を変えるべく、この街に来た。
「ついに明日は18の誕生日。私の役割がわかるわ」
目の前にいるこの男は大学で知り合った二つ上の友人だ。彼氏ではない。主人公になる私の彼氏は、主人公でなくてはいけないから。彼はモブではないものの、脇役でしかなかった。
「どうせモブだよ」
男はわかったように言う。続けて、可哀想なものを見るような目でこう言った。
「だってお前、皆と同じように考えてここに来てんじゃん」
その他
公開:19/11/16 18:36

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