消えたカメレオン

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「演技って言うのは、人間を自分の中に作ることから始まるんだ」そう言って友人の佐藤は、僕に語った。
 佐藤は、出会った時から『役者』だった。
 彼は会う度に、いつも違う姿で知らない名前を名乗っては、僕を驚かしていた。
 今日だってそう。
 完璧な女装をして僕に話かけ、困っている僕を笑っていた。
「怖くないの?」僕は先ほどの彼の言葉に質問する。
「怖いって?」彼はとぼけた顔をした。
「自分の中に沢山の人間が出来たら、自分が分からなくなりそうだから」と僕が答えると、「考え過ぎさ」と彼は笑った。

 それから暫く経って、佐藤と出会うことがなくなった。
 元々、僕達はお互いの連絡先を知らなかったし、会う時はいつも、渋谷のスクランブル交差点で待っている僕に彼が気付き、話し掛けては、遊んでいたのだ。

 きっと彼は今も、この街で何かを演じ続けているのだろう。
 群衆に紛れながら…。
その他
公開:19/11/17 09:10

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