こんな世界は嫌いです

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「こんな世界は嫌いです」
 賢しらな童だった。幾重にもぼろ布をあてがった薄汚い着物からしてどこぞの村民らしい。山間の天狗の里において、それは余りに浮いた存在だった。
「私を天狗にしてください」
 現世と隔絶した里に入れたのだから才はあると見える。人の身を捨て天狗と成る。一方通行の道程を歩むことも、不可能ではないのだろう。
 古寂びた手鏡をたぐり寄せ、童の眼前に掲げてやる。そこには、家を飛び出た子を探し月明かりのもと山中を必死に駆け巡る女がうつる。童の目に動揺の色が浮かんだ気がした。
 まだ、人の世で生きられるのだから。
 思い直してくれればいいと祈る。帰る場所はここだった、と。


お題(二八十字程度)
「こんな世界は嫌いです」〜「帰る場所はここだった」
ファンタジー
公開:19/11/17 08:27

ぴろしき

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上記アカウントにて駄文を垂れ流しているインターネットポエム揚げパン。
にほんご、すき。

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