父の湯豆腐
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12年前に死んだ父は湯豆腐が好きだった。
自身は江戸っ子と薩摩隼人のハーフだったが、鹿児島銘柄の焼酎を愛飲していたのを思い出す。死んだ父方の祖母が、父の呑み過ぎを考えてか知らないが焼酎を水で薄めて提供していたのを強烈に覚えている。祖母は父には内緒だと言っていたが、果たして父がそれを承知していたか知らなかったかは、私にはわからない。
父は単純に豆腐と長葱だけの鍋を、鰹節と醤油だけで食べるのが好きだった。それを食べながら祖母が薄めた焼酎をストレートで呑む。贅沢のできない家庭事情があってのささやかな楽しみだったのかもしれない。
私は今、その鍋には満足できず白菜やエノキダケや椎茸、鱈の切り身を追加している。つけるのもポン酢だ。水で薄めた酒は呑まないが、ビール代わりの発泡酒だ。
親不孝な贅沢者なのかもしれない。
冷え込んで来る季節、湯豆腐を食べるたびに、いつもこの父の記憶を思い出す。
自身は江戸っ子と薩摩隼人のハーフだったが、鹿児島銘柄の焼酎を愛飲していたのを思い出す。死んだ父方の祖母が、父の呑み過ぎを考えてか知らないが焼酎を水で薄めて提供していたのを強烈に覚えている。祖母は父には内緒だと言っていたが、果たして父がそれを承知していたか知らなかったかは、私にはわからない。
父は単純に豆腐と長葱だけの鍋を、鰹節と醤油だけで食べるのが好きだった。それを食べながら祖母が薄めた焼酎をストレートで呑む。贅沢のできない家庭事情があってのささやかな楽しみだったのかもしれない。
私は今、その鍋には満足できず白菜やエノキダケや椎茸、鱈の切り身を追加している。つけるのもポン酢だ。水で薄めた酒は呑まないが、ビール代わりの発泡酒だ。
親不孝な贅沢者なのかもしれない。
冷え込んで来る季節、湯豆腐を食べるたびに、いつもこの父の記憶を思い出す。
その他
公開:19/11/16 06:00
更新:19/11/16 09:23
更新:19/11/16 09:23
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湯豆腐
ささやかな贅沢
武蔵の国の辺境に棲息する“ひとでなし”のオオカミです。
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