夢幻擬人伝

渋谷は、何もないところから価値を創り出す天才だった。

昭和も平成も渋谷のファッションに翻弄されていた。それでも、そのスタイルは誰もが認めていたし認めさせた。109、マークシティ、ヒカリエ、Qフロントを育てたのも渋谷だ。ギャルに革命を起こした〈ガングロ〉も渋谷だった。そんな渋谷に、激烈なリスペクトを抱いていた。

この東京を縦横無尽に彩り、先陣を切って駆け抜けていく渋谷に、おれはついていけるのだろうか……。そんな心配をしていると、
「ついていくんじゃねぇ。おれが引っ張ってやる」
と、ギミックなファッションを纏った渋谷は、そう言って笑った。
「渋谷。この世界に生まれてくれて、ありがとう」
「おまえに出会えてよかったよ、令和。COOL〈令〉でPLUS思考〈和〉って最高じゃねぇか」

この街に最高のワクワクを届けたい。
ファッションも遊びも、最高のモノを創りたい。
おれたちは同じ方向を見ていた。