エキビョウの流行

奇妙な病が流行りだした。
駅の中でだけ、発狂するのだ。突然奇声をあげて暴れまわる。ある人は意識を失い、ある人は線路に走り込む。そして、これが何よりの特徴なのだが、一歩でも駅の敷地から出れば、また正常になるのだ。患者に共通点は無く、全国のあらゆる駅で起こっている。そのため、原因の解明が困難となっている。まさに、謎に包まれた病であった。
私の勤務する駅も例外でなく、しばしば発症する者が現れる。駅員の私は、その対応をしなければならないのだ。通常の勤務だけでも大変だというのに。

その日は心なしか、ざわざわした日だった。天気は良いし、混雑状況も平常通り、人身事故も無いのに。
なのにイライラするような、居ても立っても居られないような、そんなものが心の中に沸々と現れて──
どうやら私は仕事中に意識を失ったらしい。気づいた時には、見知らぬ病室にいた。
「これは間違いなく、『駅病』ですね」