24
19
同じ病棟の、一つ下の階に入院してた女の子。直線距離で約4m。彼女は僕を知らなくて、僕は開けた窓越しに、時々彼女の声を聞いてた。
回診に来た先生が、彼女に言った。向かいの壁を覆う、紅葉の蔦を指さして。
あの蔦の葉が、全部落ちる頃には退院だよ。
だったら落ちなきゃいいと思った。
馬鹿な理屈だが、当時は真剣だった。幸い僕は中学で美術部だ。向かいの壁を毎日眺め、スケッチブックに絵の具で描く。試行錯誤の末、本物と見分けが付かない出来栄えになった。
あとはどうやって壁に貼るか……。作戦に夢中で、つい窓から身を乗り出した。抱えたスケッチブックが傾き、ざららら、、、と、赤や黄色が紙を滑って行った。
真っ白なスケッチブックを手に、僕の頭も真っ白だった。
真っ赤な蔦の葉を手に、長い髪が窓から乗り出した。
真っ白な裏に首を捻り、見上げた彼女と目が合った。
現在は二人とも退院し、葉書きで文通を続けている。
回診に来た先生が、彼女に言った。向かいの壁を覆う、紅葉の蔦を指さして。
あの蔦の葉が、全部落ちる頃には退院だよ。
だったら落ちなきゃいいと思った。
馬鹿な理屈だが、当時は真剣だった。幸い僕は中学で美術部だ。向かいの壁を毎日眺め、スケッチブックに絵の具で描く。試行錯誤の末、本物と見分けが付かない出来栄えになった。
あとはどうやって壁に貼るか……。作戦に夢中で、つい窓から身を乗り出した。抱えたスケッチブックが傾き、ざららら、、、と、赤や黄色が紙を滑って行った。
真っ白なスケッチブックを手に、僕の頭も真っ白だった。
真っ赤な蔦の葉を手に、長い髪が窓から乗り出した。
真っ白な裏に首を捻り、見上げた彼女と目が合った。
現在は二人とも退院し、葉書きで文通を続けている。
青春
公開:19/11/15 20:30
更新:19/11/15 20:31
更新:19/11/15 20:31
着想:オー・ヘンリー
『最後の一葉』
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
ログインするとコメントを投稿できます