粉雪糖

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今年も粉雪糖の降る季節になった。粉雪糖とは北国の街に降る、薄荷の香りのする甘い雪である。この雪はいわゆる砂糖でできていない。水分子の配列や結晶のとんがり方の具合によって、人の舌には甘く感じられる代物なのである。この雪の甘さにいち早く気づいたのは、雪に親しむ子どもたちであった。
「なんとか商品化できないか」
大人たちはこぞって雪をかき集め、クリームに入れたり小麦粉に混ぜたり、試行錯誤した。しかしどれも失敗に終わった。何せ粉雪糖は、溶ければただの水なのである。
「と、言われているのは全て建前です」
喫茶店の店長がコーヒーを持ってくる。
「実は冬の風の結晶なので、香りを活かせば薄荷のような甘みを味わえます」
北国の澄んだ風が、六花の形に降ったのが粉雪糖だ。それで入れられたコーヒーは、冬の訪れの香りがする。
「本当は内緒にしたいのですよ。みんな」
粉雪糖がしんしんと、街に白く降り積もっていた。
ファンタジー
公開:19/11/15 18:00
更新:19/11/17 00:14

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
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『枇杷の独り言』
ショートショートコンテスト『家族』最優秀賞頂きました。

写真は全て自前でやっています(笑)

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