や～久しぶり

転勤してきて暫くした頃、東京駅の改札口を出た所で、「や～久しぶり」と親しそうに笑みを浮かべて近づいてくる男がいた。
親しげであったので咄嗟に「お久しぶり」と返した。
「奥さんはお元気ですか？　お子さんも大きくなられたでしょうね？」と畳み掛けてきた。
一体この人は誰だろうと頭をフル回転しても思い当たらない。
ストレートに誰だか尋ねて見ようか、その前に関西勤務時代の知り合いか聞いてみようかと思いつつ、フト「大阪・・・」と言い始めるやいなや「そう、大阪では大変お世話になりまして」と返してきた。
そして「今財布を落とし困っていたところです、いくらかお貸しい頂けないですか？」と言い出した。
これはおかしい寸借詐欺ではないかと、「生憎私も帰りの電車賃の５－６百円しか持ち合わせがないので」と言うと突然態度が変わり「なんだ時間の無駄だった、この野郎」と捨て台詞を残し遠くに走り去った。