てのひらの上の恋

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「ヒロシすげえ、またストライクかよ」
感嘆の声が上がる。ボウリングはヒロシの数少ない特技だ。幸運なのは、メンバーの中に憧れのサエコがいたことだった。
その日からサエコのヒロシを見る目が劇的に変わった。サエコの笑顔に力を得たヒロシは、思い切ってサエコに告白した。
だが…
「…私、好きな人がいるの。あなたと一緒にいるのはとても楽しいんだけど…。ごめんなさい…」
消え入りそうな声で俯くサエコを前に、ヒロシは言葉を失った。それでもショックを押し殺し、必死に声を絞り出す。
「ボウリングはストライクでも、恋愛はガーターか。情けないな。ごめん、忘れてくれ」
精一杯の格好をつけ、ヒロシは静かに背を向けて去っていった。
悄然としたヒロシの後ろ姿をサエコは哀しげに見つめていた。やがてその顔にゆっくりと笑みが浮かぶ。微かに上がった口の端から、小さな呟きが漏れた。
「ごめんなさいね。あなたは彼のスペアだったの…」
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公開:19/11/16 15:25

秋田柴子

2019年11月、SSGの庭師となりました。
現在はnote・TALES・エブリスタなどで活動中。
2026年4月7日に『栗は月色、こがね色 和菓子処長月堂』(朝日文庫)で商業デビュー。

【刊行】
・栗は月色、こがね色 和菓子処長月堂(朝日文庫)
・第31回やまなし文学賞受賞作品集(山梨日日新聞社)

【活動歴】
・第2回 日本おいしい小説大賞 最終候補(小学館)
・第31回やまなし文学賞 佳作『雨を知るもの』→書籍化
・創作大賞2025 入選 『栗と牡丹』→書籍化
・SSアンソロジー『ベリショーズ』寄稿
・ホラーアンソロジー『ウタ・カタ』寄稿

【note】
 https://note.com/akishiba_note

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