てのひらの上の恋

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「ヒロシすげえ、またストライクかよ」
感嘆の声が上がる。ボウリングはヒロシの数少ない特技だ。幸運なのは、メンバーの中に憧れのサエコがいたことだった。
その日からサエコのヒロシを見る目が劇的に変わった。サエコの笑顔に力を得たヒロシは、思い切ってサエコに告白した。
だが…
「…私、好きな人がいるの。あなたと一緒にいるのはとても楽しいんだけど…。ごめんなさい…」
消え入りそうな声で俯くサエコを前に、ヒロシは言葉を失った。それでもショックを押し殺し、必死に声を絞り出す。
「ボウリングはストライクでも、恋愛はガーターか。情けないな。ごめん、忘れてくれ」
精一杯の格好をつけ、ヒロシは静かに背を向けて去っていった。
悄然としたヒロシの後ろ姿をサエコは哀しげに見つめていた。やがてその顔にゆっくりと笑みが浮かぶ。微かに上がった口の端から、小さな呟きが漏れた。
「ごめんなさいね。あなたは彼のスペアだったの…」
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公開:19/11/16 15:25

秋田柴子

2019年11月、SSGの庭師となりました
現在は主にnoteと公募でSS~長編を書いています
留守ばかりですみません

【活動歴】
・東京新聞300文字小説 優秀賞
・『第二回日本おいしい小説大賞』最終候補(小学館)
・note×Panasonic「思い込みが変わったこと」コンテスト 企業賞
・SSマガジン『ベリショーズ』掲載
(Kindle無料配信中)

【近況】
 第31回やまなし文学賞 佳作→ 作品集として書籍化(Amazonにて販売中)
 小布施『本をつくるプロジェクト』優秀賞

【note】
 https://note.com/akishiba_note

【Twitter】
 https://twitter.com/CNecozo

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