渋い恋のはじまり
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山手線の恵比寿駅でタレ目の男が乗ってきた。その顔に私は釘付けとなっていた。
私の視線に気付く素振りもなく、彼がこちら側のドアの隅に立つ。私が座っている横だ。
彼の顔を見上げる。一目惚れしたわけではない。あまりにも丸見えだったから……。
私は衝動的に彼の腕を突っついていた。彼が私を見下ろす。
「ん?」
「あの……めっちゃ出てますよ。長い、鼻毛」
「はっ」
その瞬間、彼の顔が漢字の【谷】のようになった。私は思わず「谷だ」と呟いた。
「なんで俺の名を?」驚きの表情を浮かべながら彼が呟く。「まさか、超能力……渋い」
「えっ?」私の心臓が跳ね上がる。「どうして、私の名を?」
そう、私の名は渋井。彼はきょとんとしている。その顔に母性本能をくすぐられ、私は思わず口走っていた。
「ねぇ、これからBunkamura行かない?」
今、私の名は谷田だ。あの日、恵比寿駅から乗って来た旦那は私にとっての、福の神。
私の視線に気付く素振りもなく、彼がこちら側のドアの隅に立つ。私が座っている横だ。
彼の顔を見上げる。一目惚れしたわけではない。あまりにも丸見えだったから……。
私は衝動的に彼の腕を突っついていた。彼が私を見下ろす。
「ん?」
「あの……めっちゃ出てますよ。長い、鼻毛」
「はっ」
その瞬間、彼の顔が漢字の【谷】のようになった。私は思わず「谷だ」と呟いた。
「なんで俺の名を?」驚きの表情を浮かべながら彼が呟く。「まさか、超能力……渋い」
「えっ?」私の心臓が跳ね上がる。「どうして、私の名を?」
そう、私の名は渋井。彼はきょとんとしている。その顔に母性本能をくすぐられ、私は思わず口走っていた。
「ねぇ、これからBunkamura行かない?」
今、私の名は谷田だ。あの日、恵比寿駅から乗って来た旦那は私にとっての、福の神。
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公開:19/11/16 15:00
渋谷
まったり。
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2018年…320本 (5/13~)
壬生乃サル(MiBU NO SARU)
Twitter(@saru_of_32)
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