小さな恋のいきものがたり

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僕らは、同じ空き缶の水で育った。
縞子はシマシマの長い足と背中のラインがが美しく、僕は筋金入りのファンだった。
「一筋です!」
勇気を出して告白。僕らは藪や公園で花や果物の汁を飲み、愛を交わした。
「血ィ…ヒトの血ィ吸いたい」
「何か飲む?いつもの特製花ドリンクを」
ドスッ!
「花なぞ腹の足しにもならんわい!」
縞子は僕をどつくと、公園に一直線。
人間の体に針を差し込みズズーッと血を吸い込んだ。口から血を滴らせた縞子が顔を上げる。
「これで元気な子が生めるわい」
「えっ?僕らの?」
そこにチンピラシマカが現れた?
「勝手にうちのシマで血ィ吸われたら困りまんなぁ…ん?姉さん美人やな」
「縞子に手を出すな!」
僕は縞子さんの前に躍り出た。

『嫌だ、蚊がいる』
バチン。ブチッ。

「しまったな…ほなね」
潰れた僕の上を縞子はチンピラシマカと通り過ぎる。
「おしまい、か」
一筋の涙が頬を伝った。
その他
公開:19/11/16 14:23
ノリさんリク ヒトスジシマカ 虫シリーズ 蚊の生態

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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