海の底
2
5
この街は、十万年前まで海だった。
その頃の海蝕によって、海が引いてからは川が台地を削りとることによって、現在のヴェールのような地勢ができあがったのだという。
「そう聞いて歩くと魚になったようね」
「魚なら、もっとうまく泳ぐさ」
「なら、貝ってところかしら」
襞状の地形は方向感覚を狂わせるから私たちには地図が欠かせない。立ち止まり立ち止まりしては、スマートフォンで地図を開いて、何度も確認しながら歩いていく。
「昔から、地図の海の部分を見るのがなぜか苦手で」
「怖くなるの?」
「うん、なぜか」
訪ねたかったお店は取り払われて、新しいなにかに変わっていた。
「やっぱり、ついていけないようだね」
「無理なのよ。貝には」
そうしてまた地図をくる、指が、ふっと滑って、真っ青な海だけが映し出された。
慌てて戻そうとするけれど、ただ一面の青が現れるばかりで、顔もあげられないまま、膝から、くずれていく。
その頃の海蝕によって、海が引いてからは川が台地を削りとることによって、現在のヴェールのような地勢ができあがったのだという。
「そう聞いて歩くと魚になったようね」
「魚なら、もっとうまく泳ぐさ」
「なら、貝ってところかしら」
襞状の地形は方向感覚を狂わせるから私たちには地図が欠かせない。立ち止まり立ち止まりしては、スマートフォンで地図を開いて、何度も確認しながら歩いていく。
「昔から、地図の海の部分を見るのがなぜか苦手で」
「怖くなるの?」
「うん、なぜか」
訪ねたかったお店は取り払われて、新しいなにかに変わっていた。
「やっぱり、ついていけないようだね」
「無理なのよ。貝には」
そうしてまた地図をくる、指が、ふっと滑って、真っ青な海だけが映し出された。
慌てて戻そうとするけれど、ただ一面の青が現れるばかりで、顔もあげられないまま、膝から、くずれていく。
その他
公開:19/11/16 10:23
更新:19/11/16 20:06
更新:19/11/16 20:06
渋谷ショートショート
たまに書きます。
ログインするとコメントを投稿できます