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道玄坂は賑わっていた。哲人は上司との喧嘩で疲れている上、自宅にはツンケンした麻利絵が。寄り道したいが馴染の鰻串屋は、このごろ若い娘たちでいっぱい。と、目の前に緑の看板、占いカフェとある。入ると、女性が席を薦め、すぐに手を出せという。右手を差しだすと、素晴らしい、10年に一度の幸運が今夜訪れるのだという。ばかばかしいので2千円を払い外へ。すると足元で宝くじが。拾ってポケットへ。東横線で自宅に帰ると人だかり。救急車も。麻利絵が倒れたのだ。脳溢血で即死状態だった。翌日、会社に連絡すると、喧嘩した上司が電車に跳ねられなくなったとのこと。葬儀などが済んだある日、新聞の宝くじ抽選結果が眼に入った。スーツのポケットをから拾った宝くじを。3億円の大当たりだ。バンザイと叫んだ。その声が、いつまで寝てるのという麻利絵の怒鳴り声と交錯。飛び起きた哲人は、どこまでが現実だったのか思い出そうとしているのであった。
ファンタジー
公開:19/11/14 14:29

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