美しい鳥

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夢の中で私は子供に返っていた。

幼少期。
私は家のベランダに留っている美しい鳥を見て喜んでいた。
その鳥は七色に輝いていた。

少年期。
私は少し大きくなって、あんなに好きだった美しい鳥を妬ましく思うようになっていた。
ベランダに鳥がいるのをチラッと見遣ると、流し目に視線を逸らした。

青年期。
私は七色の鳥の美しい羽にやたらと憎しみを抱くようになり、墨汁をぶっかけた。
鳥は呼吸を重くし、哀れっぽくもがいた。

大人になった私は目を覚ました。
ベランダには、一羽のカラスが留っていた。
だみ声でけたたましく啼きながら、艶のある黒い羽を雨に濡らしている。
その羽は油ぎった黒の中に七彩を潜らせていた。

墨汁なんてぶっかけなければよかった。
私は何かを後悔した。
その何かを言葉にできればいいのに。
灰色の空を飛ぶ鳥はカラスばかりだった。

今はあのカラスに憎しみなどない。
私は頭を抱えた。
ファンタジー
公開:19/11/15 15:21

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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