癇癪餅

16
14

我が家の3歳の息子のヒロ君は、小さい頃から癇癪もちで、今はそれに反抗期がプラスして毎日が戦いだ。

ヤダヤダ
ダメ
イヤ
しない

優しく話を聞いてあげても、諭すように怒っても効かない。
いつも最後は床にひっくり返って大泣きだ。私も疲れ果ててしまった。
同居している祖母に相談すると、隣町に癇の虫を封じ込めてくれる神社があるらしい。

神社でお祓いをしてもらった後、ひとつの餅を手渡された。
「この中に癇の虫を封じ込めました。お焚き上げは3日後なので、その時にまたこれを持ってきてください」
なるほど、癇癪餅か。

その日からヒロ君はびっくりするくらい扱いやすくなった。
「ヤダヤダしなくなったねー。えらいね、ヒロ君」
ヒロ君はニコニコ笑う。褒められて嬉しいみたい。

そして2日後に大事件が起きた。

ヤダヤダ
ダメ
イヤ
しない

祖母が癇癪餅を食べてしまったのだ。
……こっちの方が手強そうだ。
その他
公開:19/11/15 10:17
更新:19/11/15 16:30

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容