晩秋の墓参り

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「あなた、また来ましたよ。寂しかったかしら?」

紅や黄色の葉が落ちる小道を通り抜けた先にそこはあった。

「父さん、ここんところ急に冷えたから寒がってるんじゃないか?」

「お義父さんは湯豆腐がお好きでしたね。」

「ゆきはすき焼きがいい!」

「じゃ、帰ったらすき焼きにするか。その前に、お参りを済まさないとな。」

墓のスイッチを入れるとホログラムで老人が浮かび上がる。

『ゆきちゃん、よく来たね。うれしいよ』

「おじいちゃん、元気だった?」

「死人が元気なわけないだろ(笑)」

『お前、女遊びはいい加減にしておけよ』

「父さん、いったい何を……」

『それから、しのぶさんも金遣いはほどほどに』

「お義父さんったら」

「母さん、どうした?」

「ふふっ、あの人らしいわね」

「何がさ?」

老女は何も答えず、微笑みながらじっと観ていた。電源が抜けているのを。
ファンタジー
公開:19/11/15 06:00
更新:19/11/26 19:39
170 墓参り ホログラム 故障 オオカミの自信作

武蔵の国のオオカミ( ここ、ツイッタランド )

武蔵の国の辺境に棲息する“ひとでなし”のオオカミです。

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