緊張した男

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男は頭の芯から冷たく痺れていった。
まるで劇薬を飲み込んだかのような顔をして硬直している。

声を発しなければならないことはわかっているが、言葉は喉の奥で凍ってしまっている。

語るべき言葉は知っているのだが、色を失った唇の震えが止まらない。歯がガチガチと鳴り出した。

だんだんと息が詰まっていく。
呼吸の度に肺が悲鳴を上げる。

自分ではコントロールできない激しい震えに襲われ、冷や汗が背中を伝い落ちていく。
たとえ神経を切断しても勝手に筋肉が震えるだろう。

心臓は小刻みに乱打する。
どくどくと血の流れる音が耳の奥にまで聞こえる。

胃がぎゅっと引き絞られた。
はらわたがうねる。

男は覚悟を決めた。
コンビニ店員の目を見て言った。

「あ、あ、あの、フランク、フランクフルト、一本ください」

四十年間、誰とも会話せずに引きこもってきた男の、実に四十年ぶりの声だった。
その他
公開:19/11/15 01:13

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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