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散歩中、川岸に頃合いの紅葉を見掛け、早めの弁当を使おうと、根方へ風呂敷を広げた。
遠目に望む山も風流だが、こうして真下に眺める景色もオツなもの。紅から橙、黄、緑へ段々と、これぞ天然の錦織り。京の西陣の職人も、到底これは作れやしない。
艶やかな木洩れ陽が、さわさわと揺れるのに誘われ、童謡『もみじ』を口遊む。二番の結び、水の上にも織る錦~と歌ったところで、風呂敷の上へはらりと落ちた。
散り時には早そうな、まだ若い朱赤へ手を伸ばす。――指は生地の表面を紅葉ごと撫ぜ、あたかも織り込み済みの様に、すっかり風呂敷の柄と化していた。
試みにもう一節。声にぴったり調子を合わせ、散り敷いた大小が、四角い布を飾って行く。吃驚するやら面白いやらで、私は夢中で『もみじ』を唄い続けたのだった。
昼の鐘が響くと、紅葉は降りやみ、辺りは静寂に戻った。藍地に銀糸の流水紋には、錦の紅葉を連ねた橋が、幾重にも架かっていた。
遠目に望む山も風流だが、こうして真下に眺める景色もオツなもの。紅から橙、黄、緑へ段々と、これぞ天然の錦織り。京の西陣の職人も、到底これは作れやしない。
艶やかな木洩れ陽が、さわさわと揺れるのに誘われ、童謡『もみじ』を口遊む。二番の結び、水の上にも織る錦~と歌ったところで、風呂敷の上へはらりと落ちた。
散り時には早そうな、まだ若い朱赤へ手を伸ばす。――指は生地の表面を紅葉ごと撫ぜ、あたかも織り込み済みの様に、すっかり風呂敷の柄と化していた。
試みにもう一節。声にぴったり調子を合わせ、散り敷いた大小が、四角い布を飾って行く。吃驚するやら面白いやらで、私は夢中で『もみじ』を唄い続けたのだった。
昼の鐘が響くと、紅葉は降りやみ、辺りは静寂に戻った。藍地に銀糸の流水紋には、錦の紅葉を連ねた橋が、幾重にも架かっていた。
ファンタジー
公開:19/11/14 02:00
散歩道で見た⑨
紅葉
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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