Lemming-like

仕事を終えて日付が変わる頃のセンター街を歩いていると、道端で１匹のネズミが死んでいた。
時々見る光景だ。いつもなら正直もう何とも思わないが、このときは心がざわついた。不穏な気配がする。

帰宅して爆睡していたが、スマホの着信音に起こされた。6時。寝ぼけて電話に出ると、同僚の原が｢渋谷が大変だ！テレビを観ろ！｣と騒いでいた。

大量のネズミがハチ公前広場を埋め尽くしている。足の踏み場もない。死体ばかりらしく、カラスに啄まれているのもいる。この映像は普通なら放送事故だろう。レポーターは言葉に詰まりながらも状況を伝え続ける。警察官や保健所の職員が駆けつけていた。
俺は何かのきっかけで知った｢レミングの集団自殺の伝説｣をふと思い出した。渋谷ってそういう場所なんだな。

原は｢すげぇな！これ！｣と興奮している。黙って聞いていたが、ひとまず｢今日は有休だから、もう少し寝かせて｣と言って電話を切った。