いつか羽になる日

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散歩中、ぶわっと風が強くなって、うひゃあ!って首をすくめた。週末は雪みたいよ、お母さんが言ってた。急に寒くなったもんね。ススキが原の上、山は半分白くなってた。
きらきら光るやつが、僕のおでこを跳ねた。空にもいっぱい光ってたんだ。うわ、もう降ってきた!はぁ~って吐いた息も、ちょこっと白く見えた。
寒いの嫌だな。でも最初の雪って、何かワクワクしない?捕まえたくて背伸びしたけど届かなくて、空の高いとこを逃げてっちゃう。助走付けて思いっきりジャンプ!指に当たった1個が、ひゅるるって傾いて、ススキが原に落ちてった。それは雪じゃなくて、羽の生えたちっちゃい虫だった。
僕が叩いたせい?どうしようっておろおろしてたら、ススキの穂から飛び上がった別の1匹が、空中ブランコみたいに捕まえて、とんぼを切って連れてった。
うんと遠くへ飛んで、芽を出して、いつかまた、羽を広げて風に乗るんだね。僕はバンザイで見送った。
ファンタジー
公開:19/11/14 12:00
散歩道で見た⑩-終話 風渡りの羽

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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