マナーのいい人

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木下君はなぜ遅刻をしたのか。
駅の待ち合わせ場所に遅れるとの連絡を受け、我々は議論を始めた。
彼は真面目である。まず寝坊ということはあるまい。
彼は鉄道好きである。電車の路線や乗り換えで間違えたということもあるまい。
彼は好青年である。他の乗客とトラブルを起こしたということもあるまい。
すると突然の病気か、怪我か?
「すみません、遅れまして…」
木下君はすこぶる元気な姿で現れた。
「いや、満員電車に巻き込まれまして…」
なるほど、人が多すぎて乗れなかったのか。
「なんとか乗れたんですが、次の駅で大量に人が降りそうだったんです。ドアの付近にいると邪魔だと思い、ドアが開くと僕は先にホームに出て乗客が降りるのを待っていたんですが…」
木下君は苦笑いした。まさか…
「ホームの列の最後尾に並んだら、僕が乗る前にドアが閉まって、電車が出発してしまったんです」
マナーが良すぎたのである。
ミステリー・推理
公開:19/11/14 09:45

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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