月のような

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僕の大好きな『おつきさま』はなんとのっぺらぼうだ。
耳朶や鼻筋の飾り双眸や唇のような大きな切れ込みは一切無く、かといって鼻腔や鼓膜もない。
あるのは不規則な凹凸だけで、これがなんとも不気味な雰囲気を醸し出している。
僕がこんな『おつきさま』に惹かれた理由は、どうしてか自分でも分からない。
口は利けない、耳も聞こえない、美味しいものの味どころか匂いすら分からない君を僕は大層気に入っているみたいだ。
ふと思う時がある。
もし僕に腕と足があれば、君を殺すことだって出来るのに、って。
抱きしめ返すことも出来ない僕は君を愛す資格すらないのだ。
目の前にいるのっぺらぼうの君が目が見えないことを、耳が聞こえないことを良いことに僕は声を上げて延々と泣いた。
その他
公開:19/11/13 02:57

腹痛

犬派です

作品に使用している画像はすべてフリー素材です。
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